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※当事務局には医師は常駐しておりませんので、ご病状や治療、お薬に関するご質問・ご相談には 対応することができません。また、医師や病院の紹介は行っておりませんので、ご了承ください。
日本うつ病リワーク協会 理事長
yoshio igarashi
一般社団法人日本うつ病リワーク協会(以下、協会)のあゆみをご紹介しますと、協会の前身の団体である「うつ病リワーク研究会」(以下、研究会)が、2008年に東京で結成されました。研究会は世話人として秋山(NTT東日本関東病院)、尾崎(名古屋大学)、横山(さっぽろ駅前クリニック)に私を加えた4人が呼びかけ、リワークプログラムを行っていた全国の医療機関(32施設)が集まりました。
リワークプログラム(以下、プログラム)の源流は1998年にNTT東日本関東病院で作業療法として始められた職場復帰援助プログラムですが、2005年にメディカルケア虎ノ門で始まった精神科デイケアでのプログラムが全国の医療機関に広まり、研究会が結成されるに至りました。
研究会ではその名の通り、厚生科学研究費や産業医学財団などの公的な研究費をいただき、プログラムの治療的構造、プログラム利用者の実態に関する調査や復職後の予後調査、スタッフの人数、資格や施設構造に関する調査研究などを中心テーマとして10年間活動をつづけて成果を発表してきました。
その間に研究会会員数は200施設を上回るまでに増え、2018年2月に一般社団法人化して現在の協会となりました。その間に復職支援(以下、リワーク)という活動は、着実に世の中に広まっていっていると感じております。
プログラムを実施していると私たちは利用者の病状や回復のプロセスを通じて様々な経験をします。不安抑うつ状態のために休職する方がほどんどですが、それらの経験から、診察室のなかで明確な診断を行うことが困難な双極性障害や発達障害およびその傾向の存在が背景となって抑うつ状態が出現し休職につながる病態があることも明らかになってきました。そのような背景を考慮してプログラム上で工夫を行うことにより、プログラムの成果を上げる努力もしてきました。
また、休職者を安全に職場に戻すための医療上の配慮や工夫などを各施設で蓄積し、それらの成果を発表する機会として年次大会を各地で開催しております。また、得られた知見を残し、広く世界に発信する媒体としてオンラインジャーナルとして「日本うつ病リワーク協会誌」を発行しています。
このように研究会の10年間の活動を礎として、協会の現在の活動を行っております。近年の変化として感じますのは、専門学会での反応です。以前の学会では「復職支援(以下、リワーク)」というテーマは、シンポジウムなどとして組んでもらわないとなかなか取り上げていただけないことが多かったのですが、近年は精神科や産業精神保健関係の学会でも通常のテーマの一つとして「リワーク」が取り上げられ、当協会のメンバーがシンポジストとして登壇する姿を普通にみるようになり、認知度は確実に高まっていると実感します。
一方、2019年年末に武漢に始まるコロナ感染のパンデミックは2023年段階でも完全には終息していない状況ですが、プログラムのような集団での活動は非常に大きな影響を受けました。それでも各施設では、感染対策を講じ、プログラム上でも様々な工夫をこらしてプログラムを継続した結果、現段階では感染拡大前に戻っております。また、2021年12月に大阪の会員施設で放火事件が発生し、多数の死者がでる不幸な事件がありました。
プログラム実施中に事件がおこり、結果的に死者数が増加したことは、集団でおこなうプログラム活動では安全に行うことの重要さを、改めて考えさせられる大きな契機になりました。そもそもリワークという言葉は、2003年ころに障害者職業総合センターが地方障害者職業センターでの「リワーク支援」というプログラムを開始するにあたって作ったもので、Reworkを語源とした造語です。つまり、リワークとは、再び(Re)働く(work)という意味です。
これまでの協会並びに会員の努力により、今やリワークという言葉が広く世間に知られるようになりました。 しかし、障害福祉施設での支援プログラムにリワークという名称を与えて運営している施設(福祉リワーク)も出てきていますが、それらの施設の利用者のうち大多数は就労経験がない(したがってリワークではない)と思われます。
リワークという耳障りの良い言葉が使われ、本来の意味を逸脱して言葉だけが独り歩きしている状況といえます。就労経験の有無により、また就労経験があったにせよ、通常雇用と障害者雇用とは就労条件が大きく違うので、支援の内容は当然変わります。すなわち、医療でのリワーク(医療リワーク)での通常雇用条件で復職をめざして就労することと、障害者としての福祉的就労を実現することは大きく異なり、当然ですがプログラムの目標も内容も異なります。
障害者の雇用を促進するという本来の福祉リワークの活動自体は重要であると考えますが、医学的治療を行って再休職を未然に防ぐことを目的とする医療リワークと福祉リワークは目的も方法も異なる別種類の活動です。当協会としましては、今後も医療リワークの普及啓発を通じて、復職支援の本質を伝えていくことは非常に重要であると考えています。
協会として今後において目指すところは、従来と変わりません。 あらためて当協会の役割をご説明しますと、 ①医療リワークの普及啓発、 ②プログラムに携わる医師やコメディカルスタッフの教育研修の充実、 ③プログラムの均てん化のためのスタッフおよび施設認定の推進、 ④調査研究の推進となります。
①医療リワークの普及啓発:さまざまなリワークが存在する中で、医療リワークでしかできないプログラムばかりでなく、診断や治療といったリワークの基礎をなす役割、加えて復職後のフォローも治療として行えるという点などを中心として、医療リワークの特色や他のリワークとはことなる役割を鮮明にするための普及啓発を行う。また、リワークはその地域に住んで働いている人々への普及啓発活動が重要であり、当協会に地域連携委員会を組織し、各地域に根差した普及啓発を各施設が行うことを協会として支援する体制を取っている。
②プログラムに携わる医師やコメディカルスタッフの教育研修の充実:すでに、協会の施設に勤務する医師やコメディカルスタッフを対象とした研修を定期的に実施してきたが、更に充実したい。コロナ感染拡大に伴い、オンライン研修として実施したが、そこで得られた経験を活かし、オンライン研修での利点を生かしつつ、実開催での研修でないと得られない成果もあることは確認できた。それらの視点を生かした新たな研修を、今後において展開していく。研修は、研修委員会が担当しており、副委員長を新たに加え更に活発に活動していく予定である。
③プログラムの均てん化のためのスタッフおよび施設認定の推進:かねてより指摘されている施設ごとのプログラムの質が不均一な点を克服するべく、2019年より施設認定制度を定め運用している。その結果、現在12施設が認定され、当協会ホームページ上に掲載されている。認定作業はコロナ感染拡大時には滞っていたが、2023年度より再開し4件の実地調査が行われている。施設認定の前提として、認定された医師やスタッフが必要であるが、これは②で触れた研修委員会がその認定を行っている。施設認定は、施設認定委員会の書面審査を経て、サーベイヤーが施設に出向いて実地調査を行い、認定が行われる。施設認定委員会も副委員長を新たにおき、活発な活動を促し、最終的には全会員施設が認定施設となることを目指す。
④調査研究の推進:調査研究は研究会時代の重要な事業であったが、その研究結果が現在のプログラムの礎となっている。現在は編集情報委員会が組織され、適時調査を行うとともに定期的な調査を会員対象に実施し、今後も公表していくこととなっている。また、先に述べたように、同委員会ではオンラインジャーナルの編集出版も行っており、事務局においてはリワークに関する様々なエビデンスも蓄積している。
当法人は、うつ病等により休職した方の職場復帰支援に関心の有る者が集まり、リワークが行なえるよう、相互の連携により患者が適切な医療サービスを受けられる基盤作りを行うことを目的とする。リワークとは正しい診断と適切な治療を通じた復職支援及び再休職予防のことをいい、リワークを行う施設のことをリワーク施設という。