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※当事務局には医師は常駐しておりませんので、ご病状や治療、お薬に関するご質問・ご相談には 対応することができません。また、医師や病院の紹介は行っておりませんので、ご了承ください。
(本研究は平成28年度において、厚生労働科学研究費補助金(障害者対策政策総合研究事業(精神障害分野))を受け、実施した研究の成果です。)
研究要旨本研究では、精神障害者の就労移行状況における課題の把握(1.中小企業との連携強化方法の提示、2.短期間のリワークプログラムモデルの開発、3.地域における諸機関との連携の標準化、4.疾病・服薬の運転技能への影響の検討、5.文献レビュー、6.再休職状況の把握、うつ病患者をふくむ精神障害者に対する復職体制の構築(7.リワークプログラム利用群と非利用群の比較、8.リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究、9.リワークマニュアルの有効性の検証、10.リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究、11.リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化、12.発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化)、精神障害の就労支援(13.医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討)を目的としている。
1.中小企業との連携強化方法の提示
社会保険労務士(以下社労士)を対象とする短時間の研修で、精神疾患、復職対応、リワークプログラムについての理解、復職支援への自信が改善することが示された。精神疾患に罹患した従業員の支援に取り組んでいる社労士と医療機関が連携して復職支援に取り組むことで、中小規模事業場への支援を拡げられる可能性がある。
2.短期間のリワークプログラムモデルの開発
プログラム開始から3ヵ月の変化について解析を行なったところ、短期型と既存型の両群において、プログラム開始から3ヵ月間で復職準備性、抑うつ症状、QOLの改善が認められた。既存型プログラム参加者のほうが3ヵ月間のQOLの改善が大きかったが、社会機能、復職準備性、抑うつ症状の変化は両群で差が認められなかった。今後、両プログラム間で、6ヵ月後までの変化、復職までに要する期間、復職後の再発率、復職後の就労継続期間、復職後のワークパフォーマンスに差が認められるかどうかについて検討する。
3.地域における諸機関との連携の標準化
事業場が希望する連携は、復職前/復職時に本人の特性を基にした業務・職場への配慮事項について書面や診察面談によって行うことであった。こうした連携による支援を今後確立的なものにしていくためにも、経済的な対価を得て、連携できるリワーク・コーディネーターのようなスタッフを確保することが必要である。
4.疾病・服薬の運転技能への影響の検討
病状の安定した双極性障害患者の運転技能は健常者に比し低下しておらず、処方薬の慢性投与が運転に与える影響は小さいことが示唆された。本研究結果は、一律に規定されている、法律の厳罰化や添付文書記載は、議論の余地があることを示している。
5.文献レビュー
最近、リワーク支援プログラムに関する文献が新しく発表されており、文献レビューの対象論文を変更して、再度作業を進めている。
6.再休職状況の把握
業務ストレスとプライベートのストレスに分けた場合には、3.00という評価であり、分類の妥当性については、すべて、3.00を越える評価を得た。再休職時ストレス要因シート全体の分かりやすさは、2.69とやや低かったが、今後、再休職時のストレス要因を確認するために、今回作成されたシートを使用する妥当性が確認されたと考えられる。
7.リワークプログラム利用群と非利用群の比較
対象者の診療録等の既存資料から後方視的に検討した。調査Ⅰでは、85施設のリワークプログラム利用者5,014人について検討した。リワークプログラムからの脱落率は20.5%であり、利用者の復職1年後の就労継続推定値は83.2%であった。調査Ⅱでは、リワークプログラム利用者と非利用者について、傾向スコアによりマッチングした446人の復職後の就労継続性を比較した。その結果、リワークプログラム利用者の就労継続性は有意に良好であった(p=0.001)。Cox 比例ハザードモデルによる多変量解析においても、非利用の場合のハザード比は2.343 (95%CI: 1.456-3.772)であり、リワークプログラムの再休職予防効果が示された。
8.リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究
欠勤等により発生する労働生産性の損失であるabsenteeism、そして就労下において発生する罹病による労働生産性の損失であるpresenteeism について検討した。その結果、1年間の追跡調査を通して有意な改善が見られていた。臨床的症状と労働生産性の回復には時間のズレが見られ、労働生産性の回復は復職後よりゆるやかに改善することが示唆された。
9.リワーク指導マニュアルのRCT
リワークマニュアルを用いて、休職中の気分障害患者の復職に対する有効性の検討を無作為化比較試験を用いて行った。30例が対象となり、介入群(N=15)、非介入群(N=10)例をフォローアップした。
10.リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究
研修で使用するテキストの作成を行い、書籍化した。研修会講師の養成に向け、一定の条件を満たす者をリストアップし実際の研修会に講師候補として参加した。スタッフ認定制度として認定スタッフと専門スタッフの2段階を設定し、リワークプログラムに対する理解度と実務経験をもとに区分するようにした。さらにスタッフ認定制度と連動したリワーク施設における実地研修や研修手帳による管理について具体的に検討した。
11.リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化
前年度までに明らかになった問題点に焦点を当て、本質的な部分でリワークプログラムを安定して続けていくために必要な標準的中核プログラムと施設基準を示したガイドラインとなる書籍の発行を目指し、原稿を完成させた。
12.発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化
「手引きのわかりやすさ」「対象のわかりやすさ」「診断に関わらない支援の可能性」「スタッフへの有用性」「患者への有用性」については、3.00を越える評価であり、今回作成された資料をリワークスタッフが、発達障害の特徴を有する対人関係障害者への支援に用いることの妥当性が確認された。職域との連携については、さらに別な資料を作成する必要があるかもしれない。
13.医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討
援助付き雇用型サービスは利用者に多くの就労機会や長い就労期間、機能の改善をもたらす可能性がある。一方で、日本の文化では就労が利用者の主観的な生活の質やウェルビーイングの向上に必ずしも結びつかない可能性があり、今後の課題となった。
研究要旨目的:本研究は、①産業医、産業保健スタッフではない、精神保健に関する専門的な研修をつんでいない社会保険労務士や企業担当者などでも活用できる一次、二次、三次予防活動のための実務的なツールを整理し、ツールの使用や医療施設との連携に関する講習会の有用性についての有用性調査による中小企業との連携強化、②リワーク支援プログラムに関する文献レビュー、③ 系統的に関連要因を把握するために開発されたシートの有用性に関する産業医調査による再発状況の把握、④開発された手引きについての、リワーク支援を行っているスタッフへの有用性調査による発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援 を目的とする
方法:①中小企業との連携強化
これまでに開発された一次、二次・三次予防ツールの使用方法について社会保険労務士を対象とした講習会を行い、「精神疾患に対する理解」「復職する従業員への対応についての理解」「リワークプログラムについての理解」「復職する従業員を支援する自信」の4 項目について、講習会の有用性について調査を行った。
②文献レビュー
精神疾患を有している企業社員の、復職までの期間の短縮または復職後の就労継続を支援するための非薬物的介入で、コントロール群がある研究に関する文献を、MEDLINE、Psychoinfo、Web of science、Cochrane のエンジン検索でレビューした。
③再発状況の把握
再発状況の関連要因を評価するためのシートについて、産業医を対象に、「再休職時ストレス要因シート全体」「業務上ストレス」「プライベートのストレス」の「分かりやすさ」「分類の妥当性」について、1~4点で評価を求めた。
④発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援
エキスパートコンセンサスにより作成された「手引き」について、リワークプログラム26 施設のスタッフを対象とした有用性調査を行ない、「手引きのわかりやすさ」「対象のわかりやすさ」「診断に関わらない支援の容易さ」「スタッフに役に立つか」「職域に役に立つか」について、1~4点で、評価を求めた。
結果:①中小企業との連携強化
有効回答数は74 名(回答率98.7%)で、研修の有用性は、4 項目全てにおいて研修後に有意に得点が上昇した(p<0.001)。また、社労士の経験年数が高い人ほど、研修に対する満足度が高く(p<0.001)、これまでに経験した精神疾患に罹患した従業員数が多い人ほど、研修の質が高いと感じ(p<0,05)、必要とした研修が受けられたと感じ(p<0.05)、自分の問題に対処するのに役立ったと感じていた(p0.05)。
英語論文を完成し、投稿した後、書き直しを行っている。
再発状況の関連要因を評価するためのシートについて、産業医16 名から有用性に関する回答が得られた。「再休職時ストレス要因シート全体」の「分かりやすさ」「分類の妥当性」2.69(0.79), 3.20(0.68), 「業務上ストレス」の「分かりやすさ」 「分類の妥当性」3.00(0.63), 3.25(0.77), 「プライベートのストレス」の「分かりやすさ」「分類の妥当性」3.00(0.93), 3.50(0.73)であった。
28 施設に回答を求め、26 施設、27 名から回答が得られた。手引きのわかりやすさ」「対象のわかりやすさ」「診断に関わらない支援の可能性」「スタッフへの有用性」「患者への有用性」「職域への有用性」について、それぞれの評価の平均および標準偏差は、3.37(0.69),3.31(0.68), 3.04(0.65), 3.22(0.85), 3.08(0.57), 2.85(0.80) であった。
結論:①中小企業との連携強化
社労士を対象とする短時間の研修で、精神疾患、復職対応、リワークプログラムについての理解、復職支援への自信が改善することが示された。精神疾患に罹患した従業員の支援にとりくんでいる社労士と医療機関が連携して復職支援に取り組むことで、中小規模事業場への支援を拡げられる可能性がある。
再休職時ストレス要因シート全体の分かりやすさは、2.69とやや低いが、業務ストレスとプライベートのストレスに分けた場合には、3.00という評価であり、分類の妥当性については、すべて、3.00を越える評価を得ている。今後、再休職時のストレス要因を確認するために、今回作成されたシートを使用する妥当性が確認されたと考えられる。
「手引きのわかりやすさ」「対象のわかりやすさ」「診断に関わらない支援の可能性」「スタッフへの有用性」「患者への有用性」については、3.00を越える評価であり、今回作成された資料をリワークスタッフが、発達障害の特徴を有する対人関係障害者への支援に用いることのダ合成が確認された。職域との連携については、さらに別な資料を作成する必要があるかもしれない。
研究要旨精神疾患による休職からの復帰を促進し、また復職後の再発防止と就労継続を目的とした心理社会的介入であるリワークプログラムが全国に広がっている。しかし中小企業社員の利用促進、医療経済的な効率の改善を図る上で、既存のリワークプログラムよりも短期間で実施される「短期型リワークプログラム」への社会的な要請が高まっている。
本研究の目的は、既存型リワークプログラムを比較対象とした短期型リワークプログラムの効果を明らかにすること、そして既存型リワークプログラムと短期型リワークプログラムについて医療経済的な側面の比較を行なうことである。
研究方法は、短期型リワークプログラムと既存型リワークプログラムへの参加者を対象に、プログラム開始から3ヶ月/6ヵ月間の社会機能、職場復帰準備性、抑うつ症状、QOLの変化、復職までの期間、復職後の就労継続とワークパフォーマンスを評価し、プログラムによる差の検討を行なう。
プログラム開始から3ヶ月の変化について解析を行なったところ、短期型と既存型の両群において、プログラム開始から3ヵ月間で復職準備性、抑うつ症状、QOLの改善が認められた。既存型プログラム参加者のほうが3ヵ月間のQOLの改善が大きかったが、社会機能、復職準備性、抑うつ症状の変化は両群で差が認められなかった。
今後、両プログラム間で、6ヵ月後までの変化、復職までに要する期間、復職後の再発率、復職後の就労継続期間、復職後のワークパフォーマンスに差が認められるかどうかについて検討する。
研究要旨うつ状態を呈する精神疾患で休職した労働者に対し、復職と再休職予防を目的とした治療プログラムであるリワークプログラム(以下、プログラム)を実施している医療機関(以下、治療機関)において、関連する諸機関との連携は欠かせないものである。特にプログラム利用者の所属する事業場との連携については、スムーズに職場復帰をするためには相互に必要な情報を取り交わすことが必要となる。そこで、本研究では事業場側に対して、治療施設との連携の実態、要望、阻害要因等を調査し治療機関側の医療サービスの質の向上を目指した。また、連携の重要性と標準的な方法を理解してもらうためのパンフレットを作成し、諸機関との連携を強化し患者の支援に役立てることを目指した。
今調査から、「医療機関との連携を今後も継続したいですか」については、全員が継続を望んでいた。「現在の連携に対し改善すべき点」については、①医療機関、企業それぞれに役割を理解した連携を希望、②会社内に病気休職支援のプログラムがあるため、会社の制度とうまく組み合わせた情報共有を望む、との記載があった。「連携を希望する時期」については「復職前/復職時」が100%で最も多く、次いで「リワーク参加中」が79%であった。
「連携の内容」について聞いたところ、「業務・職場への配慮事項」が95%で最も多く、次いで「本人の病状、特性に対する説明」が92%、「本人のリワークプログラムへの参加状況」が85%、であった。「治療施設側から希望する情報提供」について聞いたところ、「本人の特性」が97%で最も多く、次いで「業務への影響」が94%、「配慮事項」が92%、「今後の見通し」が90%、「評価表」が74%であった。「連携の方法」について聞いたところ、「書面により」が79%で最も多く、次いで「診察面談により」が68%、「ケース会議により」が42%であった。
「連携に係る費用の負担者」については、「社員本人が負担」が66%、事業者が負担」が26%であった。「連携に係る費用」についてどのくらいの金額が適切か聞いたところ、平均9,481 円であった。事業場が希望する連携は、復職前/復職時に本人の特性を基にした業務・職場への配慮事項について書面や診察面談によって行うことであった。
こうした連携による支援を今後確立的なものにしていくためにも、経済的な対価を得て、連携できるリワーク・コーディネーターのようなスタッフを確保することが必要である。
研究要旨双極性障害は、長期休務や就労生産性低下などを伴いやすく、さらに厳罰化法制度や添付文書 記載により運転中止を求められ、一層社会復帰を難しくしている。しかし、双極性障害患者の運転技能に関する検討はなく、これまでにうつ病患者を対象に運転技能を検討した実績を踏まえ、本研究では、病状の安定した双極性障害患者の運転技能を予備的に検討し、健常者との比較を試みた。
対象は、運転歴のある双極性障害患者30名と、性と年齢をマッチさせた健常者31 名であり、患者の多くは寛解していた。運転技能については、両群で統計学的有意に異ならなかったが、認知機能については、注意や遂行機能が患者群で有意に低下していた。運転技能、認知機能、症状評価尺度、年間走行距離などに有意な関連は認めず、処方薬と運転技能についても明確な関連は認めなかった。
研究要旨リワークプログラム利用者の復職後の就労継続性については、より一般化されたアウトカム調査が必要である。そこで本研究は調査Ⅰとして、全国的な大規模調査により、リワークプログラム利用者の復職後1年間の就労継続性を検討した。また調査Ⅱとして、リワークプログラムの再休職予防の効果を、リワークプログラム利用者と非利用者の就労継続性を比較することにより明らかにした。
調査Ⅰ、Ⅱいずれも対象者の診療録等の既存資料から後方視的に検討した。調査Ⅰでは、85施設のリワークプログラム利用者5014人について検討した。リワークプログラムからの脱落率は20.5%であり、利用者の復職1年後の就労継続推定値は83.2%であった。調査Ⅱでは、リワークプログラム利用者と非利用者について、傾向スコアによりマッチングした446人の復職後の就労継続性を比較した。
その結果、リワークプログラム利用者の就労継続性は有意に良好であった(p=0.001)。Cox 比例ハザードモデルによる多変量解析においても、非利用の場合のハザード比は2.343 (95%CI: 1.456-3.772)であり、リワークプログラムの再休職予防効果が示唆された。
研究要旨リワークプログラムを利用した気分障害による長期休職者を対象に、復職後の労働生産性について調査した。調査は復職後1年間であり、リワークプログラム終了時、復職1、6、12 ヶ月後の計4 回にわたり、郵送による自記式質問紙調査を実施した。26 医療機関より193人の対象者の同意を得て調査を実施した。平成28 年度末現在、180人のフォローアップが終了した。復職時点において、臨床的症状は見られない程度に症状は回復しており、復職後1年を通してその症状は安定していた。
また、労働生産性の損失については、欠勤等により発生する労働生産性の損失であるabsenteeism、そして就労下において発生する罹病による労働生産性の損失であるpresenteeism について検討した。その結果、1年間の追跡調査を通して有意な改善が見られていた。臨床的症状と労働生産性の回復には時間のズレが見られ、労働生産性の回復は復職後よりゆるやかに改善することが示唆された。
研究要旨気分障害による休業者は増加している(Okuma and Higuchi 2011)が、休業から復職した後に、再休職に至る症例が多いことも複数報告されている(堀ら 2013; Endo et al., 2013; Sado et al.,2014)。しかし、休職から復職後の最初の1年に最も頻繁に再発や再休職に至る(堀ら 2013; Endo etal., 2013)。
現在リワーク活動が全国で盛んにされているが、そのためにはある程度の人員や期間等を要するために、多くの勤労者を対応するとはいいがたい。本研究ではリワークマニュアルを用いて、休職中の気分障害患者の復職に対する有効性の検討を無作為化比較試験を用いて行った。30例が対象となり、介入群(N=15)、非介入群(N=10)例をフォローアップした。
研究要旨
目的
本研究は、援助付き雇用型サービスを提供する機関における統合失調症の利用者を対象として、1) 就労アウトカムと臨床アウトカムの効果、2) 就労アウトカムに影響する個人要因、3) サービス提供内容とサービス提供量を検証することを目的とした。
方法
援助付き雇用型サービスを行う就労支援機関における新規の統合失調症の利用者を対象に、12ヵ月の前向き調査を行った。各機関が提供する援助付き雇用型サービスの質を評価するために、日本版個別援助付き雇用フィデリティ調査を実施した。アウトカム調査は、就労アウトカムや機能(Global Assessment of Functioning: GAF とLife Assessment Scale for the Mentally Ill: LASMI)、就労への動機付け(MOCES)、生活の質(SF-8)、心理的ウェルビーイング(WPS)、利用者からみたスタッフのストレングス志向性を包含した。また、プロセス調査として、サービスコード票を用いて、支援の内容とその量(時間)をモニタリングした。対象者のエントリー期間は、2014年12月1日から2015年11月30日までであった。
結果
12ヵ月間の追跡において、研究対象者51名のうち26 名が就労を経験し、平均就労期間は104.8日(SD = 127.7)であり、就労者のみの平均就労期間は205.6日(SD = 105.1)であった。臨床アウトカムは、ベースライン時と比較し、追跡調査時ではGAF(F = 9.39, p < 0.001)やLASMI(F = 5.28, p = 0.008)の得点は向上したが、心理的ウェルビーイングの得点は一時的に下がっていた(F = 3.85, p = 0.027)。
12ヵ月間における一人当りの1対1 換算のサービス提供時間は118 時間(SD = 128)であった。そのうち、75%は事業所内でのサービスであり、22%は事業所外でのサービスであった。また、集団プログラムと個別支援は約50%ずつであった。サービス提供量は3ヵ月目にピークに達し、7ヵ月目から減少に転じ、その後8,9ヵ月目に一度微増、12ヵ月目に向けて再び減少していた。
結論
援助付き雇用型サービスは利用者に多くの就労機会や長い就労期間、機能の改善をもたらす可能性がある。一方で、日本の文化では就労が利用者の主観的な生活の質やウェルビーイングの向上に必ずしも結びつかない可能性があり、今後の課題となった。プロセスデータの解析から、本調査のように就労アウトカムに関する高い効果をもたらすサービスには事業所外でのサービスが含まれることを明らかにしたが、集中的なサービスは9ヵ月目までに提供されていた。
研究要旨うつ病リワーク研究会所属の施設と利用者を対象とし、リワークプログラム(以下プログラム)の実施 状況を毎年1 日調査している。今回は9 回目の調査であったが、201 医療機関のうち166 医療機関から回 答を得た(回答率(82.6%)。病院が42.8%、診療所が57.2%で比率は昨年より診療所が4.4%増加した。
復職支援(以下リワーク)以外の対象者をプログラムで受け入れている施設は47.6%あり、対象者は「社 会適応技術の習得を目的とした発達障害者(思春期、成人とも)」、「社会生活機能改善を目的とした主に 統合失調症患者」、「居場所の提供を目的とした慢性期精神疾患患者」の順で多かった。診療報酬上、最 も多い区分は精神科デイケアで66.3%、週5 日の開催は55%であった。スタッフの業務のうち1 日あたり の個別記録作成時間は平均126.3 分であった。現在運用されているリワーク施設全体の定員は3,633人 であり、1 施設平均は22.8人であった。
166 施設で合計975 名のスタッフが勤務していたが、心理職が 最も多く全体の31.7%を占め、看護師、精神保健福祉士、作業療法士と続いた。プログラムの開始にあた り91.0%の施設では開始条件を定めており、主治医変更を求めている施設は53.6%であった。プログラ ム開始までの待機期間は9.6%の施設であり、平均46.1 日であった。利用にあたって一定のステップを設 けている施設は74.1%であった。
スタッフによる評価を実施している施設は86.1%であり、うち「標準化 リワークプログラム評価シート」は79.4%の施設で利用されていた。76.5%の施設で他院の患者を受け入 れており、うち81.8%の施設が主治医と文書で連絡を取っていた。復職時の勤務先企業の産業医・産業保 健スタッフに対する連絡・調整の方法は、書面が最も多く62.5%、診察時が27.1%であった。人事労務担 当者に対しての連絡・調整の方法も産業医・産業保健スタッフと同様に書面、診察時の順に多かった。
復職後のフォローは外来診療が最も多く79.5%で、復職後のフォローアッププログラムを実施している施 設は51.8%であった。プログラムの内容に関し166 施設1,683 プログラムを実施形態毎に5 区分に分け たところ「集団プログラム」が3 割弱、「その他のプログラム」と「特定の心理プログラム」が2 割強で あった。医療機関毎にみると5 区分すべてに該当するプログラムを実施している医療機関は52%、4 区 分に該当している医療機関は26%であった。
平成28 年10月の7 日間に登録されていたプログラム利用 者3,134人について個別調査を実施した。休職回数は、平均2.1 回、総休職期間は平均600日であった。 利用者のICD-10による診断の内訳は、F3 気分(感情)障害が78.1%、F4 神経症性障害、ストレス関連 障害および身体表現性が13.7%であった。また、DSM-5 による双極Ⅱ型障害の可能性がある利用者は 28%、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(AD/HD)の可能性がある利用者は26% であった。
背景
近年、リワークプログラムを実施する医療機関が増加しており、うつ病リワーク研究会会員施設では、精神科診療所を中心に32都道府県、約120施設がプログラムを実施している。
精神科診療所で治療中のうつ病・不安障害等により休職した患者の復職後の就労状況等の予後を追跡することにより、リワークプログラムが復職に果たす効果を判定し、プログラムの治療的意義を確立する。また、研究の実施により医療機関が行うリワークプログラムや復職支援に対する社会的理解を高めることを目的としている。
うつ病リワーク研究会正会員の属する精神科診療所の患者を対象としたコホート研究。対象は、休職2回以上または休職1回目でも連続して180日以上勤務できない状態である者とした。対象者およびその主治医等に対しアンケート調査を行い、復職後の就労継続日数を指標とした予後の解析を行う。対象者の組入期間は、平成22年9月より平成23年2月までの6ヶ月間であり、観察期間は平成25年12月31日までを予定している。
アンケート調査は、対象者本人に対し、復職後3ヶ月おきに2年後までの計8回、EメールとWEBを利用した調査システムにより調査を行っている。また対象者の主治医等に対しては、郵送で組入時、復職時、復職後3~6ヶ月おきに2年後までの計7回の調査を行っている。 なお本研究は、うつ病リワーク研究会の研究組織であるワーキングチームとデータ管理のために組織された外部委員会により実施している。
平成24年2月27日現在、本研究の組入人数は11診療所247人である。対象者の現状は、復職175人(70.9%)、プログラム途中の中止脱落43人(17.4%)、現在もリワークプログラム中である者21人(8.5%)、消息不明1人(0.4%)、参加途中辞退7人(2.8%)である。
対象者の基本属性は、男性202人(81.8%)、女性45人(18.2%)、リワークプログラム開始時の年齢は平均39.7才(SD7.8)、休職回数は平均2.3回(SD1.3)、延休職期間は平均20.4ヶ月(SD16.4)であった。ICD-10による主診断は、F31双極性感情障害64人(25.9%)、F32うつ病エピソード70人(28.3%)、F33反復性うつ病性障害67人(27.1%)、F34持続性気分障害16人(6.5%)、F40恐怖性障害7人(2.8%)、F41その他の不安障害7人(2.8%)、F42強迫性障害1人(0.4%)、F43重度ストレスへの反応及び適応障害8人(3.2%)、F45身体表現性障害7人(2.8%)であり、87.8%が気分障害圏であった。
現時点での就労予後の追跡期間は、平均285.5日(SD120.2)である。対象者本人への調査票の回収率は、復職後3ヶ月後提出分(対象168人)が78.0%、6ヶ月後(対象154人)が79.9%、9ヶ月後(対象129人)が75.2%、12ヶ月後(対象76人)が76.5%、15ヶ月後(対象28人)が85.7%、18ヶ月後(対象2人)が100%であった。復職日を起点としたKaplan-Meier法による就労継続推定値は、1年後で78.5%(SE5.4)であった。
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