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※当事務局には医師は常駐しておりませんので、ご病状や治療、お薬に関するご質問・ご相談には 対応することができません。また、医師や病院の紹介は行っておりませんので、ご了承ください。
2024年10月30日に訪問し、作業療法士の山下様からお話をうかがう。
「精神科デイケアセンター」は2017年5月に創設された。それまでは通院作業療法を行っていたが、大学病院の改築に合わせてデイケア施設として整備された。
主に復職を目的とした「リワーク」プログラムを行っているが、無職から一般就労を目指す利用者、福祉就労や復学を目指す利用者も受け入れているのが特徴である。当協会会員の中で、大学附属病院で実施されているデイケアでのリワークとしては最も充実した施設・スタッフをそろえたプログラムが提供されている施設である。
定員は26名で毎日12~13名が利用している。他院からの受け入れも主治医の交代なしに積極的に行っている。スタッフは作業療法士、看護師が専任で各1名。公認心理師・精神保健福祉士・医師が必要に応じてプログラムに関わっている。
プログラムは週5日で作成されているが、主に午前は個人プログラム、午後に集団でのプログラムが行われるのが特徴である。1日のスケジュールは開始は9時で、12時から13時の昼休みをはさみ、終了は16時である。
「リワーク」は4つのステージに分けられており、体力と脳力を回復させる第1および第2ステージで週5日参加できることを目標とし、週5日参加可能となれば再発および再休職予防のための自己洞察を行い自己分析レポートとして提出してスタッフと内容を吟味する。
第3および4ステージでは再休職予防策の習慣化を目標としてグループ活動のリーダーなどを経験する。ステージの変更に際しては協会で定めた評価基準を利用している。
午前は、睡眠覚醒リズムの見直しや生活に関する相談を行う「生活リズムの振り返り」、小グループで企画・運営を行う「グループワーク」、8回1クールで行う「マインドフルネス認知療法」を行うとともに、スタッフとの個別面談も行っている。
午後は、月曜は卓球を行う「運動」、火曜は認知トレーニング、水曜は集団で行う「認知行動療法」、木曜は疾患・薬・コミュニケーション・ストレスコーピングなどについて学ぶ「心理教育」や復職後の状況を想定して働き方をどうするか仲間同士で相談する「復職事前イメトレ」、金曜は陶芸を主にした「芸術療法」を行っている。
プログラムの段階はステージ毎の基準として明確に決められているが、期間については柔軟に対応されており個別に対応する形で進む。第1ステージとして半日~1日利用で生活リズムを整え、新たな集団に参加して慣れる時期、第2ステージとして休まず参加できるようになり、他メンバーからの気づきを得て休職に至った経緯を振りかえり、ストレス対処をする時期。第3ステージとして、ある程度の負荷をかけながら課題遂行能力を向上させ、職場と連携し復職に向けて準備する時期。
第4ステージでは模擬職場を設定しリーダーを任せるなど各作業のマネジメント業務も自他の心身の調子を意識して取り組み、試し出勤なども行う時期。このように、復職を目指す時期を定めており、これらの段階を確認しながら個別に対応している。
職場との連携は毎月書面で復職準備性のレーダーチャートや復職準備性得点を明記した定期報告書の送付や返書をいただく形式で連携を図っており、職場から要望があった場合や必要に応じて対応している。
復職後のフォローとしては、コロナ禍以前は年数回のグループワークを行っていたが、コロナ禍以降は中断となっている。
2023年の実績としては45名(男性27名、女性18名)の登録者のうち、1年間で修了した利用者16名のうち復職が14名で復職率は87%、残り22名はプログラム継続中、中断者7名であった。
利用者の背景は公務員や教員、金融関係者などが19名で、事務職が多く、平均の利用期間は6か月程度で、神経発達症が背景にありそうな利用者が5割くらいを占めるという。
このように大分大学で実施されているリワークはプログラムが細やかに配慮された秀逸なものであり、しかも医療関係者の教育施設でもある大学附属病院で実施されている点で今後さらに発展を期待したい施設である。