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※当事務局には医師は常駐しておりませんので、ご病状や治療、お薬に関するご質問・ご相談には 対応することができません。また、医師や病院の紹介は行っておりませんので、ご了承ください。
2024年3月1日に訪問し、院長の阿部隆明先生と公認心理師の鈴木恵子さんにお話をうかがった。
病院の外来待合室に「デイケアのご案内」として以下の文章が掲示されていた。
『平成29年3月より小山富士見台病院は定員70名の大規模デイケアを始めました。平成27年4月、現名誉院長加藤が院長に就任してから、リワークを目的にした利用者が増えてきたこともあり、これまでの定員枠50名では対応できなくなったためです。
(中略)会社出勤を想定し、毎日、朝決まった時間に起床してリワークデイケアに参加し、昼間作業をして夕方家に帰る生活リズムを作ることを目指しています。自分の車を運転して参加するメンバーが大半です。
担当医師の指導・助言の下、メンバー、スタッフとともに室内ではオフィスワーク、ミーティング、認知行動療法、屋外では園芸療法、スポーツを行っています。職場結合性うつ病・双極性障害(加藤)のため参加し、首尾よく職場復帰されている方が増えています(小山富士見台病院院長、阿部隆明)』
病院は地元の栃木県小山地区医師会の有志により昭和44年に創立された。デイケアは平成11年に小規模デイケアとして開設され、上記のようにリワークデイケアが定員20名で平成29年から始まり現在に至っている。メンバーの個別性に応じ、一人だけで過ごせる部屋、女性専用の部屋、音楽演奏室などもそなえている。
名誉院長の加藤敏先生並びに現院長の阿部隆明先生とも自治医科大学で精神科教授を退官されて院長として赴任された。病院を取り巻く環境としては、ホンダ、日産、神戸製鋼所、小松製作所など日本を代表する世界的企業、また、自治医科大学、獨協医科大学など高度医療機関があり、経済的にも文化的にも活動性が高いといえる。
「レジリアンス・連帯・成長」を基本理念としている。
人間には誰でも逆境を跳ね返す自己回復力・レジリアンスがそなわっており、どんな状況でも希望を持ち続け、しなやかに適応し、正しく成長する新たな機会を見出す可能性をもつという考えのもと、リワークデイケアでは、「身体」の次元と「精神」の次元、双方での主体の組み直しを目指すことを基調としている。リワークデイケアで一般に行われている認知行動療法の枠にはおさまらない、メンバーの日々の創造性/想像性を尊重した幅広いアプローチを探っている。
プログラムは月~金、9時30分~15時30分のデイケアとして実施されている。リワークデイケアの参加にあたっては、1時間程度をかけてスタッフとの面談が実施され、利用者の個別の事情を聴取して個人に合わせた利用を提案している。
プログラム内容としては、心理教育、自己洞察、認知行動療法、アサーション、オフィスワークなどの教育や再発予防を念頭に入れたプログラムの他に、絵画創作、集団で他のメンバーと自由に話し合いをするグループワークを行っている。音楽演奏室では、専門的な経験を積んだスタッフの指導のもと、ギターなどの演奏も行っている。
病院には幅広い敷地があり、いつでも散歩できる。青空のもと木々を見ながら、大地をしっかり踏みしめ、歩幅でゆっくり歩く身体感覚を大事にしている。畑では、四季折々の野菜を育てて収穫し、食事会をする園芸活動も行っている。
利用期間は回復状況や体調に合わせ、概ね3か月を目途として週2回から徐々に回数を増やしていくという。利用にあたっては、外来通院の方だけでなく、他院通院中の方も受け入れており、担当医を設けて対応している。
2015年4月~2024年2月末までの期間の9年間で利用者が108名おり、70%が復職し、就労または再就労が23%、7%が復学した。平均利用期間は復職群で4.5か月、就職・再就労群で10.2か月であった。復職したメンバーの中に、気晴らしがてら、仕事が休みの日にリワークデイケアに参加する人もいるとのこと。
年齢では40代26%、20代・30代がそれぞれ25%、次いで50代が18%であった。診断としてはうつ病が81%、適応障害11%等であった。仕事荷重による燃えつきの要素をもつ事例が多い。
メンバーの業種としては、地方公務員のほか、近隣に点在する企業で働くエンジニア・製造業種が多く、ホワイトカラー、ブルーカラーが約半数ずついる。各メンバーの自主性を尊重し、個人特性、関心、問題に見合った多様なプログラムを展開している。