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※当事務局には医師は常駐しておりませんので、ご病状や治療、お薬に関するご質問・ご相談には 対応することができません。また、医師や病院の紹介は行っておりませんので、ご了承ください。
2023年11月24日に訪問し、小野政宏院長と心理士の戸田和憲さんからお話をうかがった。
2002年3月6日にクリニックを開院し、それまでの4病院での経験を生かして、同年にデイケアを併設した。デイケアはうつ病デイケアとして稼働していた。
教員や公務員などのホワイトカラーのみならず四日市市の特色である半導体製造企業や石油化学コンビナートで働くブルーカラーの休職者のためのリワークを主な目的として、2012年4月から「リ・ワークデイケア」を始めた。元々「うつ病デイケア」を週3日実施していたところ、再休職予防と再燃・再発予防を目的としたプログラムを1日加えて週4日の「リ・ワークデイケア」とした。クリニックならではの医師・スタッフ・利用者の相互理解の高さを利点としている。
リワークデイケアの対象はうつ状態により休職中の方だけでなく、うつ状態による退職からの再就労を目指す方も含めている。6~7割をブルーワーカーが占めるが、ブルーワーカーといっても大手企業の方もいれば中小企業の方、勤務形態も日勤や交代勤務などさまざまである。また公務員や教師などのホワイトカラーや主婦もいる。「うつ病デイケア」の利用者も含めると利用目的や立場の違うさまざまな利用者が時には同じプログラムを通じて関りをもつこともある。
また、他院の患者も主治医を変更せずに受け入れている。産業医からの紹介もあり、大手企業の産業医や保健師の方にはリワークについて周知されているが、さらに連携が必要と思われる。
季節によって差があるが参加者は8~15人程度であり、平均利用人数は11人。疾患は主にうつ病圏の方であり双極性障害は2割くらいいる。また、発達障害はその傾向まで含めると3割程度である。スタッフは医師のほかに看護師1名、公認心理士3名である。
プログラム開始にあたり、動機付け面接が行われる。そこではどうしてうつになったのかを職場の状況や診断と関連付けて聞く。この面接は何度か行うことが通常で、職場で起こった事実と症状、本人の体験の仕方を分けて整理できるように手助けして「リ・ワークプログラム」で取り組む課題を設定する。リ・ワークデイケアでは辛かった過去の出来事を振り返る作業を含むため、本人の精神的な負担も大きいと考えている。利用する本人にとって「なぜリ・ワークデイケアが必要なのか」ある程度納得してもらうことが始まりであると考えている。また面接を通して心理士による見立ても行っていくが、本人となるべく率直な言葉で共有した上で共同意思決定を目指す。
プログラムは週 4 日実施され、主に火曜日に再燃・再発予防プログラムを実施している。
再燃・再発予防プログラムでは、はじめは負荷をかけても大丈夫か確認するために『認知機能回復プログラム』に所属して「脳トレーニング」や「ジョブトレーニング」、「デュアルタスク」といった作業中心の活動(例えば模型を製作することなど)を通して注意や集中力の回復や特徴について確認をとり、指先の動きが戻っているか確認する。これらはブルーワーカーを念頭に入れてのプログラムでもある。並行して集団での「うつ病の心理学習」に参加してもらい、他利用者の体験談を聞きながら自身の病歴を振り返っていく。
生活リズムが整い、ある程度の負荷に耐えられる状態であることが確認されると『自己分析プログラム』への参加が開始される。月に 1 度は「どうして休職することになったのか」自分なりに整理したことを報告するなど、負荷も増す。また、この段階では「グループディスカッション」や「集団認知行動療法プログラム」への参加も推奨される。
集団認知行動療法プログラムでは「認知再構成法」を学習・実践している。以前は3か月を1クールとして認知再構成法を学習・実践していたが、利用待機者が多くなり過ぎたために現在は「全5回の基本講座」と「認知再構成法 実践」とに分けて実施している。新規利用者が入るタイミングで全員が基本講座に立ち戻って再学習するようにしたことで、すでに認知再構成法に馴染みのある利用者が新規利用者のサポートを行うことも増え、集団凝集性も増したように思う。
火曜日の「再燃・再発予防プログラム」以外には、対人関係スキルを扱う集団プログラムとして「チーム de チャレンジ」や「SST」が行われている。「チーム de チャレンジ」ではプログラム前半に課題をこなしてもらい、プログラム後半に自分の振る舞い方について振り返りを行う。他にも体力作りのための「朝ウォーキング」、「ゆるヨガ」、「スポーツ」といったプログラムや、「模型作り」、「書道」、「ゲーム」、「芸術活動」、「メンバープログラム」といったプログラムも実施している。「メンバープログラム」では、過去に「ダーツ大会」、「湯の山温泉カメラの旅」といったプログラムを利用者が企画・提案し、告知から当日の運営まで任せたこともある。これらのプログラムは「うつ病デイケア」と合同のプログラムでもある。さまざまなプログラムを提供し、利用者それぞれの強みを発見できるように意識している。「楽しいと感じて心地よい」「ともに回復する仲間がいる」「自分にもいいところがたくさんある」などをキーワードといえるか。火曜日の「再燃・再発予防プログラム」ももちろん重要であるが、ひとりの人間として人生を生きる上で「うつ病デイケア」のプログラムも同様に重要であると思う。
「うつ病デイケア」と「再燃・再発予防プログラム」を合わせて「リ・ワークデイケア」と認識してもらいたい。
プログラムの内容をうかがい感じたことは、四日市という生産現場が多く、ブルーカラーの利用者を対象であるための工夫として、指先の動きを模型の制作で感じ取るといった部分での工夫は、なるほどと感心した。
利用期間は3か月~半年と説明しているが、平均的には半年くらいである。フォローアップは土曜日に行っていたが、コロナ感染拡大で中止となっている。現在は復職後も「うつ病デイケア」をスポット利用する方がおり、顔をだし、近況報告し合うだけでも学んだことを思い出せるとのことだ。再利用者は多く、男性が多く、平均で40歳代、ただ20~30歳代では発達障害の傾向のある利用者が多い。